太陽系で一番難しい恋 (高校生編) 第4話
(前回までのあらすじ)
ヒマワリちゃんとの華の下校生活が始まるも、ヒマワリちゃんと僕の間には水牛(自転車)がいつも立ち塞がったのだった。
すぐ隣で歩きたいのに歩けない・・・
そんな葛藤の日々が続き
万策尽きかけたある日、僕はヒマワリちゃんを遊園地デートに誘い、
なんとオーケーをもらってしまったのだ。
(前回第3話はこちら)
-第4話- 遊園地でドーン!
ついにヒマワリちゃんを遊園地に誘うことに成功した僕は、ある誓いを立てた。
「今日こそヒマワリちゃんと手をつなぐ!」
遊園地には、あのいまいましい水牛がいない。
これは何を意味するか!?
すぐ隣で歩く絶好のチャンスなのだ。
そして、隣で歩けるだけではない、手をつなげるチャンスもあるのだ。
ヒマワリちゃんと手を繋ぎたい!
切実な想いと共にデートの日を迎えたのであった。
今日はいつもの学校から駅までの15分ランデブーとはわけが違う、
ヒマワリちゃん一日貸し切りデートだ!
当然のようにテンションは上がる。
しかし、このテンションが、あだとなることをこのときはまだ知らなかった。
いつもは制服姿のヒマワリちゃんが私服で現れた。
高校生にとって、いつも制服を着ている女子が私服を着るのは新鮮この上ない。
あー、なんてカワユイのだ!
遊園地に着いた僕たちは、回るコーヒーカップやら、メリーゴーランドやら乗っているうちに、
ジェットコースターに乗ろうという話になった。
僕は高所恐怖症だ。
ジェットコースターは、はっきしいって怖い。
げげっ、ジェットコースター?と一瞬たじろいだが、ここで閃いたのだ。
ジェットコースターのキャーキャーのどさくさにまぎれて手を繋げるのでは? と!
こうして、僕たちが乗ったジェットコースターはゆっくりとレールを上っていく。
このゆっくりとレールを上っていく時間が、不安と怖さでドキドキしてたまらない。
でもこのときは、そのドキドキもあったが、それ以上に「どさくさに紛れて手をつなぐのであ〜る!」というミッションに対するドキドキの方が高かった。
ガタンゴトンとジェットコースターがレールの頂点に到達し、一転、猛スピードで下りだした。
キャー、キャーと叫ぶ乗客たち。
ヒマワリちゃんも横でキャー!と叫んでいる。
チャンスだ!
僕も「うわー!と」叫びながらも、頭の中では、
「よし、今いくか?」
「いやまだ早い!」
「あー、緊張するぅ~」
「あのコーナーを抜けてからだ」
「ぐわー、すぐ横に、すぐ横に手があるのに、届かない」
「なぜなんだー」
「おちつけー」
「今、ジェットコースターに夢中になっているから、手を握ってもばれないはずだ」
「この追い風にのらないバカがいるか、チキン野郎」
「今しかない、ロッキー」
「うぉ~」
「がるるー」
「あへあへあへ」
と、頭の中で忙しく自分自身を叱咤激励しているうちに、あっという間にジェットコースターが終わってしまった。
作戦失敗だ・・・
だがそれに懲りず、そのあとも手を繋ぎたい、繋げない、繋ぎたい、繋げないという葛藤でモンモンとしながら、いくつかのアトラクションに乗って無駄な汗をかいていた。
そして、いつの間にか夕暮れどきとなり帰ることとなった。
遊園地の出口までの帰り道、ついにヒマワリちゃんと真横に並び、手をつなげそうな絶好のチャンスが訪れた。
僕のテンションはMAXになった。
今を逃すとチャンスはない!、出口までが勝負だ。
「よし、やるぞ!」
と、意気込んだ僕は、全然ちがうことをやってしまった。
なぜか突然、前方に走り出し、前方宙返り(手をつく版)をやってしまったのだ。
(Meの回想)
なぜそこで前方宙返りをやってしまったのか、まったくもってわからない・・・
おそらくあれだ。
吊り橋効果というのをご存知だろうか?
吊り橋や遊園地のようなドキドキする場所では恋愛感情を持ちやすくなるというあれだ。
あの吊り橋効果が僕には効きすぎたんだ。
思い返せば、あの日はテンションが上がる要素がてんこ盛りだった。
私服のヒマワリちゃんから始まり、
コーヒーカップでぐるぐる回され、
ジェットコースターで乱高下の中でのどさくさミッション、
極めつけに、
普段叶わなかったすぐ隣で歩くミッションが達成できてしまったことで、
沸点を超えてしまったんだ。
ナチュラルハイ、ちょっとしたジャンキーだ。
ツリバシジャンキー・・・
そうだ、あれは彼のせいではない。
吊り橋効果が裏目っただけだ。
良い子のみんなは、くれぐれも好きな人の前で、前宙しないように。
(回想終わり)
でも、当時の僕には、裏目ったことに気づく能力がなかった。
前方宙返りをうまくできた(と思った)僕は、「決まった!」と心の中で叫んだ。
ドーン!
(着地音ね)
「決まった!」
中学生の時、よく練習した前方宙返り、しばらくぶりなのに決めてしまったのだ。
でも、決まったのは、技だけではなかった。
( ゚Д゚)
振られることが確定したのだ。
しかし、そのときは、そんなこと思いもよらない僕は、その日のデートをルンルンで終えたのだった。
・
・
・
その数日後のことである。
いつもの中庭の待ち合わせ場所に、ヒマワリちゃんは少し緊張した面持ちで現れた。
「話したいことがあるの・・・」
心臓がバクバクした。
なんとなく、何が起こるのか予感をしたからだ・・・
続く
P.S. 書いてしばらくたったあとに思い出しましたよ。
緊張して何していいかわからなくなったんだ。
そしてたぶん、おもむろに格好つけたくなったんだろう。
あの当時、バク転やら、空中をクルクル回ってる光GENJIが、もててもててしゃあない時代だったら、自分も回転したらモテるのではと勘違いしてしまったのかも…バク転できないから前転いっとこみたいな。
でも格好つけようとするほど、格好悪くみえるんよな。
アホやったなあ…
第5話(最終話)はこちら
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