太陽系で一番難しい恋 <スペイン留学編> 第12話 ☆どうして好きな人には伝えたいことをうまく伝えられないのか?
(前回のあらすじ)
ポーランドまでローズちゃんを追いかけた挙句、振られてしまい、落ち込んでお酒浸りになってしまう。
おまけに彼女には彼氏ができていた。
普通ならば、自分を振った彼女とすぐに会うことはないだろう。
でも、ポーランド最後の夜、僕はまだ残る恋心は横において、友達としてローズちゃんとの最後の時間を楽しもうと決めた。
最後だったからなのか、それとも、心決めをしたからなのかはわからない。
最後の夜は、ローズちゃんと本当に仲のいい友達のように話すことができた。
今まで、彼女と話すときはいつも緊張して、言いたいことが言えなかったのに、自然な自分でいられたことがとても不思議だった。
次の日の朝、僕はポーランドを去った。
もう今度こそ、二度と会うことのない彼女に見送られ、僕はスペインへの帰路についたのだった。
前回11話がまだの方はこちら
-第12話- グラナダの手紙
アリカンテに戻ると、またいつもの日常が始まった。
相変わらず、ローズちゃんのいない町は寂しさに満ちていた。
でも一つだけ違いがあった。
もう振られたのだ。
彼女のことを思い出すのはよそう。
そう心に決めた。
それでも、この町にいるとどうしても、行くところ行くところ、いちいち彼女のことを思い出させてくれる。
僕は、気持ちを切り替えるために、住む町を変えることにした。
いろいろ調べて、グラナダを次の拠点に決めた。
グラナダには、大学付属の語学学校があり、規模が大きいのが魅力だった。
そして、あの有名なアルファンブラ宮殿にも惹かれたからだ。
全く新しい土地で、新しい生活をしよう。
そうすれば、きっと忘れることができる。
(写真は、アルファンブラ宮殿の中)
実際にグラナダに移り住んだのは正解だった。
行く場所、見る場所、すべてが新しい場所なので、アリカンテで感じた「ローズちゃんがいない」と感じさせる場所に出くわさずにすんだからだ。
新しい友達もたくさんできて、だんだん彼女のことを考える時間が減っていった。
グラナダでの暮らしは、5,6人の学生同士(スペイン人、オランダ人、イギリス人、イタリア人男女混合)でシェアするアパート暮らしだった。
外国人の友達と一緒に料理を作ったり、一緒にご飯を食べたり、酔っぱらって夜の町に繰り出すのは、とても楽しかった。
僕は料理で冒険をするので、映画インディジョ~ンズになぞらえて、インディと呼ばれた。誰やねん?
僕はグラナダで新しい生活をはじめて落ち着いたころ、ローズちゃんに手紙を書いた。
何を書いたのかまでは、よく覚えていない。
ただ、その手紙に対するローズちゃんの返事の手紙が残っていた。
ローズちゃんを忘れるために、手紙や写真は全部処分したはずなのに、なぜかその手紙だけ残っていた。
一番内容的には手厳しい手紙が。
手紙にはこんなことが書かれてあった。
とてもとても長い手紙をありがとう。
(とてもとてもというのがちょっと皮肉っぽい、苦笑。言いたいことを面と向かって、言えなかった僕は、手紙にいっぱい書いたのだろう)
私はあなたがそんなに長い間、私に興味があったことを知らなかったわ。
私があなたに興味があったのは3日間よ、ごめんなさい。
私は、人生でたくさんのいいことも悪いことも経験したわ。
私はあなたに愛をもっていなかったことを知っていたわ。
そしてそれはこれからも持つことはないわ。
あなたは日本人、そして私はポーランド人。
私たちは、私たちの気持ちについて話すことができなかったわ。
そして、私たちには、スペイン語でも英語でも話すことに問題があった。
あなたがポーランドに来たとき、私とボーイフレンドの関係は終わったわ。
私とボーイフレンドの関係は2週間ちょっとだった。
これは私にとって悲しいことではなかった。
でも、私はあなたとは、付き合うことを考えることができなかったわ。
私があなたにポーランドに来てほしかったのは、”友達として”来てほしかったの。
あなたは、少しだけ変わらないといけないと思う。
あなたはお酒を飲むことばかり考える。
あなたはお酒を飲みすぎる。
あなたは、問題をもっているときにお酒を飲むわ。
でもその問題をあなたは話そうとしない。
これはStupidよ。
私は人がお酒をたくさん飲んで酔っ払うのが嫌い。
よくないと思うの。
手紙ありがとうね。
あなたがいい人生を送りますように。
そしてあなたが、私よりもっといい女性と出会いますように。
ローズ
この手紙をグラナダの町の通りのベンチで開封し読んでいた僕は、胸が張り裂けるように痛くなったのを覚えている。
僕はずっと想い続けていたのに、ローズちゃんが僕に興味があったのは3日間だけだった。
手紙には、僕は問題があるとすぐにお酒を飲んで、そのことを話そうとしないと書いてあった。
まったくそのとおりだった。
僕は人を好きになると、自分の思っていることが言えなくなった。
想いとは、全然違う行動ばかりとっていた。
ローズちゃんの手紙や写真は忘れるために、燃やしてしまったのに、この手厳しい手紙だけが残っていたのは、もしかしたら20年後の僕に、こうして読んでもらうためだったのかもしれない。
たぶん、あのときは、書かれていることの全部は受け入れることが、できていなかったのかもしれない。
20年たった今、改めて手紙を読んでみて、3日間しか興味がなかったというところで、「えつ、3日? マジですか!?」と突っ込みを入れたくなったからだ。
人はそれぞれのドラマの中に生きている。
僕は、彼女と繋がったあのアリカンテでの時間を止めたまま、ずっとドラマの中で生きていたんだ。
僕とローズちゃんのドラマが交錯したのは、たったの3日だけだった。
次回、 エピローグ - Gracias! Spain
次回 13話は こちら
P.S.
よくこの手紙が、残っていたなあと思います。
20年後の今改めて読んでみても、少し胸がキュっとなりました。
でも、それ以上に青春だったな~と、胸が熱くなりました。
P.P.S
最終話を2話にわけて書きました。
それ、最終話とちゃうやん!という突っ込みはナシで、笑。
次回がほんとの最後だよん。
by 自己卑下上等! 自己肯定感を高める 炎のメンタルコーチ
無意識を味方につけて恋愛力を高める 恋愛改革コーチ
平山 仁ー
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